NotebookLMとは? – Google発のAIノートブック
NotebookLMは、もともと「Project Tailwind」という実験プロジェクトとして2023年に発表され、2023年夏から一部ユーザー向けに提供が始まりました。その後順調に開発が進み、名称もNotebookLMへと改められて2024年には正式版が公開されています。
提供元はGoogleであり、現在もGoogle Labsチームによって実験的要素を取り入れつつ開発が続けられています。2024年6月にはマルチモーダル対応の新AIモデル(Gemini 1.5 Pro)の搭載や各種機能追加とともに、日本を含む200以上の国・地域で利用可能になりました。つまり日本のユーザーもGoogleアカウントさえあればNotebookLMを試すことができます。
NotebookLMでできること
NotebookLM最大の特徴は、ユーザー自身の持つドキュメントやノートをAIに「読み込ませて」活用できる点です。手元の資料をアップロードすると、AIがその内容を理解・整理し、あたかも「自分専用AIアシスタント」のように振る舞います。例えば、研究論文や会議の議事録、業務マニュアルなど複雑な資料でも、NotebookLMに読み込ませれば:
内容の自動要約:重要ポイントを抽出し、簡潔にまとめてくれます。長文を読む時間を大幅に短縮できます。
質問応答:資料の内容に基づいて質問すると、その答えをAIが教えてくれます。根拠となる原文の引用付きで回答してくれるため安心です(後述)。
新しい視点の提案:単なるQ&Aに留まらず、資料を元に関連アイデアを出したり、創造的なアウトプットを生成したりもできます。自分では思いつかない切り口が得られることもあります。
このようにNotebookLMは、手持ちの情報源をAIが「自分の代わりに読んでくれる&考えてくれる」ツールと言えます。情報過多の時代において、必要な知識を素早くアイデアを得る助けとなるようデザインされています。
NotebookLMの主な機能一覧とその説明
NotebookLMには生産性向上のための様々な機能が搭載されています。ここでは主要な機能をピックアップして紹介します。
ドキュメント要約(サマリー生成):アップロードした文書ごとにAIが要旨を自動生成します。文書のキートピック(重要テーマ)や要約ポイント、さらには「この内容を理解するために質問すべき事項」まで提案してくれるため、資料全体の把握が容易になります。初めて読む難解なレポートでも、まずサマリーを確認することで効率よく内容を掴めます。
質問応答(チャットQA):NotebookLMのインターフェースにはチャット形式のAIアシスタントが組み込まれており、アップロード済みの資料に関する質問を日本語で投げかけると、その場で回答が得られます。例えば「この報告書の第2章を簡単に説明して」と聞いたり、「会議録の中で決定事項は何だった?」と尋ねたりすれば、AIが資料を読み取って答えを返してくれます。回答には引用が添えられ、根拠となった資料の一節やページが示されます。この引用機能により、AIの回答をすぐオリジナル文書で確かめられるので安心です。
ワンクリック生成ツール:アップロードした資料を基に、様々な付加情報を自動生成するツールが用意されています。代表的なものは以下のとおりです。
FAQ(よくある質問)生成:資料の内容から想定されるQ&A集を自動生成します。例えばプロジェクト資料なら「目標達成の課題は何か?」など、読者が疑問に思いそうな点を質問形式で列挙し、その答えも提示してくれます。
ブリーフィング文書:複数の資料をまとめて要点整理レポートを作成します。プロジェクトの概要説明資料や経営陣向けの報告書作成に役立ちます。
学習ガイド/スタディガイド:資料の理解を深めるための学習用ドキュメントを生成します。内容のまとめに加え、関連トピックの解説やチェッククイズなども含まれることがあります。
タイムライン作成:資料内の出来事や履歴を時系列に沿って並べ、年表形式で整理します。プロジェクトの進捗や履歴を把握したいときに便利です。
自動要約ドキュメント:既述のサマリー機能をさらに発展させ、複数資料の要旨を一つのドキュメントにまとめます。
これらはNotebookLM画面の「Studio」と呼ばれるパネルからボタン一つで生成できます。生成後は内容を編集したり、必要に応じて再生成して別のバリエーションを作ることも可能です。
オーディオ概要(Audio Overview):NotebookLMならではのユニークな機能として、資料内容の音声化があります。アップロードした資料をAIが理解し、2人の話者によるポッドキャスト風の会話形式で内容をまとめてくれるのです。例えば長いレポートでも、10分程度の対話音声でポイントを把握できます。通勤時間など「ながら聴き」で情報収集したい場合に非常に有用です。しかも2025年4月のアップデートでこの音声概要が日本語を含む50以上の言語に対応し、生成言語を自由に切り替えられるようになりました。日本語資料だけでなく英語の論文でも、日本語の対話音声に自動翻訳・要約してくれるため、語学の壁を越えて情報をインプットできます。
ウェブ資料取り込み(Discover Sources):NotebookLMは当初、ユーザー自身がアップロードする手元資料のみを対象としていましたが、ウェブ検索連携機能も加わりました。2025年4月の新機能「Discover Sources」では、調べたいトピックを入力するとAIがウェブ上から関連情報を自動検索し、適切な記事やサイトを選んで要約を提示してくれます。気に入ったソースは1クリックで自分のノートブックに追加でき、そのまま他の資料と同様に内容を深掘りしたり音声概要を作成したりできます。つまりネット上の最新情報もNotebookLMに組み込んで活用できるわけです。リサーチの手間を一段と減らし、情報収集から整理までワンストップで行える強力な機能と言えます。
マルチモーダル対応:NotebookLMはテキストだけでなく画像やグラフを含む資料にも対応しています。例えばプレゼン資料(Googleスライド)内の図表について「このグラフの示す傾向は何?」と質問すれば、AIが画像内容を分析して答えてくれます。回答には画像の出典ページも引用され、裏付けも万全です。マルチモーダルAIの導入により、テキスト以外の情報も考慮した包括的なアシスタントとなっています。
マルチデバイス・マルチ言語:NotebookLMはパソコンのブラウザだけでなく、スマートフォンアプリでも利用できます。2025年5月にAndroid版とiOS版のモバイルアプリがリリースされ、移動中でも資料をアップロード・要約したり、生成音声をバックグラウンド再生で聞いたりできるようになりました。
以上がNotebookLMの主要な機能です。このほかにも、複数資料を横断検索する高度な全文検索や、メモ記入中に文脈に応じて文章の言い回しを提案してくれるスマート補助機能など、細かな便利機能が随時追加されています。総じてNotebookLMは、「資料を投入すれば、後はAIがいい感じに整理・要約・回答してくれる」頼もしい機能と言えるでしょう。
業務効率化への具体的な活用例
NotebookLMの特徴を踏まえると、ビジネスの様々な場面で効率化ツールとして活用できます。ここではいくつか具体的なユースケースを紹介します。
レポート・企画書の作成:調査資料や市場レポートなど参考情報をNotebookLMに集約すれば、内容の要点整理が瞬時に可能です。例えば複数の市場調査PDFをアップロードし、NotebookLMに「主要なトレンドをまとめて」と依頼すれば、重要ポイントだけを抽出したブリーフィング資料が得られます。さらに「この内容で企画書のアウトラインを作成して」と指示すれば、提案書の骨子までAIが提案してくれるでしょう。人間がゼロから文案を練るよりはるかに早く、しかも見落としなく情報整理ができます。
会議議事録の要約と共有:会議やインタビューの記録をノートブックに入れておけば、長時間の議事録から決定事項やアクションアイテムを自動抽出できます。例えば1時間の会議録音を書き起こしたテキストをNotebookLMに読み込ませ、「重要な合意事項と今後の課題をリストアップして」と尋ねれば、AIが要約箇条書きを作成、そのまま会議のサマリーメールとして展開する、といった使い方が可能です。特に社内の定例会議など毎回記録が大量になる場合、要点だけ把握して共有できるためメンバー全員の時間節約につながります。
プロジェクト文書のナレッジ化:プロジェクトでは仕様書・設計書・メール記録など様々な文書が発生しますが、NotebookLMに集めておけばプロジェクト専用の問い合わせデスクのように機能します。例えば「○○の最新仕様はどの文書に書いてある?」「前回リリースの変更点は?」と質問すれば、関連する文書から回答を引っ張ってきます。複数ドキュメント間のつながりや矛盾点もAIが指摘してくれることがあり、情報の一元管理・活用に役立ちます。
営業・顧客対応への活用:NotebookLMは営業資料や顧客とのやりとり記録の分析にも有効です。例えば製品マニュアルや価格表、過去の提案書をまとめてNotebookLMに入れておけば、商談準備で知りたいことをすぐ調べられます。「過去1年で類似業界への提案内容は?」「主要顧客の要望ポイントを要約して」といった質問に、AIが瞬時に答えてくれるでしょう。
ナレッジ共有・教育研修:NotebookLMは社内のナレッジベース構築や社員教育にも応用できます。新人研修用に社内ドキュメントやFAQをまとめたノートブックを用意しておけば、新入社員は疑問点をAIに尋ねて自己解決できます。マニュアル読破に何日もかけなくても、「~の手順を教えて」と聞けば該当箇所を抜粋して説明してくれるため、実践的なラーニングが可能です。また研修教材をアップロードし音声概要を日本語で生成すれば、移動時間にも耳で学習できるコンテンツが手軽に作れます。ノートブックを共有すれば複数人で学習状況を共有できるので、研修担当者が進捗を把握するのにも役立つでしょう。
以上のように、NotebookLMは「情報を扱うあらゆる場面」で活用が期待できます。特に調査・分析・文章作成といった作業において、下準備や草案作成をAIが担ってくれるため、人間はより創造的なタスクに注力できます。実際、多くの作家や研究者がNotebookLMをリサーチや執筆支援に使い始めており、有名な作家が自分の資料を分析させて新著のアイデア出しを行ったケースも報告されています。業種や職種を問わず、「大量の情報を素早く整理し意思決定に活かしたい」というニーズに応える万能アシスタントと言えるでしょう。
NotebookLMのメリットと限界
便利なNotebookLMですが、当然ながら万能ではありません。長所を最大限活かしつつ、限界も理解しておくことが大切です。ここではメリットと注意すべきポイントを整理します。
NotebookLMのメリット
時間短縮と効率アップ:大量の文書を読む手間を省き、要点把握や質問応答を瞬時に行えます。例えば100ページの報告書でも、NotebookLMなら数秒で要約を表示し、知りたい点を質問すれば必要箇所を教えてくれます。情報収集・分析に費やす時間を大幅に短縮し、作業効率を上げられます。
情報の網羅性と発見:複数の資料を横断して分析できるため、資料間の関連付けや新たな発見が得られます。人間だと見落とす細かな共通点や矛盾も、AIが指摘してくれることがあります。資料同士を組み合わせた結果を引き出せる点は大きな価値です。
回答の信頼性(引用付き):NotebookLMの回答には原文引用がつくため、「なぜそう答えたか」の根拠が明確です。従来のAIチャットボットにありがちな根拠不明の回答(いわゆるAIの幻覚=誤情報の生成)も、NotebookLMでは裏付けを確認しながら進められるため安心感があります。重要なビジネス判断にも、引用元を示せます。
ドキュメント管理の一元化:NotebookLM上に資料を集約することで、散逸しがちな情報を一箇所で管理できます。検索性の高い知識ベースとして機能し、個人の頭の中に留まっていたナレッジもチームと共有しやすくなります。Googleドライブ等との連携もスムーズで、既存のワークフローに組み込みやすいです。
多言語・音声対応:日本語を含む多言語に対応している点もメリットです。海外の情報源でも言語の壁を感じず活用できますし、テキストを読む時間がない時は音声でキャッチアップするなど柔軟な使い方ができます。
プライバシー保護の配慮:アップロードしたデータはAIモデルの学習には使われない設計になっています。他のユーザーから自分のデータが見られる心配もありません。企業利用でも社内情報が外部に漏れるリスクを抑えている点は評価できます(※ただし後述の注意事項も参照)。
基本無料で使える:NotebookLMは現時点で基本機能を無料提供しています。無料でも1つのノートブックに最大50件のソース追加や1日50回までの質問など十分な範囲が使えます。さらに高度な機能や大規模利用をしたい場合は有料プラン(NotebookLM Plus/Pro)へのアップグレードも可能ですが、まずは無料版で試してみて問題ないでしょう。
NotebookLMの限界・注意点
提供された情報に限定される:NotebookLMは基本的に与えられた資料の範囲内で回答や要約を行います。裏を返せば、ユーザーがソースとして投入しなかった情報は答えられません。一般常識的な質問には答えられる場合もありますが、ChatGPTのようにインターネット上のあらゆる知識に直接アクセスしているわけではない点に留意が必要です(※2025年現在、必要に応じて前述の「Discover Sources」でウェブ情報を追加できますが、ユーザー操作が必要です)。したがって、網羅性を高めるには自分で関連資料を漏れなく集めておくことが重要になります。
完全な正確性は保証されない:AIによる要約や回答内容は便利な反面、誤りや不自然な表現が混じる可能性があります。特に日本語では、翻訳を伴う場合などにぎこちないフレーズが生成されることも報告されています。専門用語のニュアンス違いや数字の読み間違いなどもゼロではありません。NotebookLM自体も「Generative AIは実験段階」という注意書きを明示しており、重要な内容は必ず人間が原文と突き合わせて確認・修正する必要があります。
大量データ投入時の制約:無料版ではノートブック数やアップロード数・サイズ、1日のクエリ回数などに上限があります。通常利用には十分な設定ですが、大量の文献(数百件以上)を一度に扱いたい場合や、より長時間にわたりAIと対話したいケースでは物足りなくなる可能性があります。その際は有料版への切り替えで上限緩和や追加機能の利用が可能ですが、コストとの兼ね合いを検討する必要があります。
以上のように、NotebookLMは強力なツールですが過信は禁物です。「AIに任せっぱなしにせず、人間が最終チェックと判断を行う」ことが大前提となります。その上で適切に使えば、生産性向上に大きく寄与してくれるでしょう。
以上、GoogleのAIノートツール「NotebookLM」について、その概要から具体的な使い方、活用事例、メリット・限界、注意点まで詳しく解説しました。情報整理や文書作成に費やす時間を劇的に削減できるNotebookLMは、初心者にも扱いやすい形でAIの恩恵をもたらしてくれる画期的なツールです。実際に触ってみるとその便利さに驚くはずですので、興味を持たれた方はぜひNotebookLMにアクセスして体験してみてください。適切に活用すれば、きっと日々の業務効率がアップし、よりクリエイティブな仕事に時間を振り向けられるようになるでしょう。
参考文献
Martin, Raiza/Johnson, Steven(2023 年 7 月 12 日)「NotebookLM: How to try Google’s experimental AI-first notebook」『Google The Keyword』〈https://blog.google/technology/ai/notebooklm-google-ai/〉(2025 年 6 月 2 日参照)
Google(2024 年 6 月 6 日)「NotebookLM を日本語でも提供開始。ウェブサイトや Google スライドにもサポート」『Google 公式ブログ』〈https://blog.google/intl/ja-jp/company-news/technology/notebooklm-google/〉(2025 年 6 月 2 日参照) blog.google
Google Labs(2025 年 4 月 2 日)「NotebookLM Discover Sources: Add web research to your projects」『Google Keyword Blog』〈https://blog.google/technology/google-labs/notebooklm-discover-sources/〉(2025 年 6 月 2 日参照) blog.google
Roth, Emma(2025 年 4 月 29 日)「Google's AI podcast maker is now available in over 50 languages」『The Verge』〈https://www.theverge.com/news/657785/google-audio-overviews-ai-podcasts-50-languages〉(2025 年 6 月 2 日参照) The Verge
Nikkei Matome 編集部(2025 年 4 月 30 日)「NotebookLMの音声概要機能が日本語を含む50以上の言語に対応!」『Nikkei Matome』〈https://nikkeimatome.com/?p=58448〉(2025 年 6 月 2 日参照) nikkeimatome
Takuya(2025 年 5 月 9 日)「2025年4〜5月のNotebookLM新機能アップデート」『Takuyaの生成AIラーニングラボ』〈https://takuya-genai.com/notebooklm-4/〉(2025 年 6 月 2 日参照) Takuyaの生成AIラーニングラボ
Business Insider 編集部(2025 年 6 月 2 日)「Here’s how Uber’s product chief uses AI at work — and one tool he’s going to use next」『Business Insider』〈https://www.businessinsider.com/how-uber-product-chief-uses-ai-work-chatgpt-gemini-notebooklm-2025-6〉(2025 年 6 月 2 日参照) Business Insider
平岡 憲人(2025 年 5 月)「NotebookLMの安全性調査レポート」『note』〈https://note.com/norito_hiraoka/n/n4a5e78486267〉(2025 年 6 月 2 日参照) note(ノート)
Google(アクセス日 2025 年 6 月 2 日)『NotebookLM 公式サイト』〈https://notebooklm.google/〉notebooklm.google