『EnTryView』というサービス名

前記事:『社会人2年目の僕がAI面接ツールを開発するまで』

開発したAI面接サービス『EnTryView』について、今回はそのサービス名について綴っていこうと思う。

経緯

それはAI面接(当時のサービス名)の利用規約を弊社の法務部の担当者に確認してもらっているときだった。

担当者の方から「AI面接」という名称は既に商標登録されており、商標権を侵害しうる、と連絡がきた。

今になって思えば、「AI面接」という捻りのないストレートなネーミングは、AIが世の中に浸透しており、AI面接サービスが世の中に溢れているのだから、すでに商標登録が(それも早い段階で)されていて当然である。

「盲点だったな…」と当時の僕は少し肩を落としつつ、新サービス名の考案へと取り掛かった。


AIと人の棲み分け

新サービス名の考案が必要になった経緯を上司に相談すると、一緒に考えましょうか!という返信と共に「サービスのUVP(Unique Value Proposition)を考えながら、Why、What、How、Where、Whenのそれぞれの観点で、タグ、ハッシュタグになるようなキーワードを、10個考えてください」と宿題が課された。

10分程度でスプレッドシートにまとめ、その宿題を終えた。そして、その内容を基に新サービス名の考案した。

宿題の内容をまとめたスプレッドシート

この新サービス名の考案にそれほど時間を掛けたくないという想いもあり、この宿題の回答内容、AI面接サービスの概要のみをプロンプトに入力し、AIでサービス名を考えてもらった。

AIが考案したネーミングは、「MEETRIX(ミートリクス)」。

面接=Meet + 評価軸=Matrix (~リクスという語尾でテック感を出す、映画『マトリックス』のイメージより)、企業に対して信頼感を与えるブランド性(プロフェッショナル感)を演出した、とのことだった。(by AI)

ものの5分程度。商標登録も調べた限りされていない様子。

上司に「~ということで、MEETRIXにしようと思います!」と連絡すると、「これを生成したプロンプトを教えてください」と連絡がきた。UVPの宿題への回答とAI面接の概要のみを含んだプロンプトを送ると、「たしかにネーミングを考案するのに時間はかけるべきではないし、僕だってなんだっていいと思ってる。だけど、AIが100%考えた、このネーミングを佐藤君はこれから100%の想いを持って、ユーザーに売っていける?」と問われた。さらに言葉は続いた。

「AIの役割は代替か拡張でしかない。時間的な制約もあるし、人間の脳は一つしかないからAIを使ってネーミングを考えるのは間違っていない。だから、プロンプトにプロダクトへの佐藤君自身の想いや言葉をもっと込めるべきでは?また、AIに考えてもらうのなら1個~3個とかではなく、100個200個レベルで考えるべきでは?」と。

首肯するしかない真っ当なアドバイス。そして、AIを活用するビジネスパーソンとして、プロダクトマネージャーとして、仕事を進めていく中で、肝に銘ずるべき事であった。

「ありがとうございます。考え直します」とすぐに連絡をして、考え直した。

「AIの役割は代替か拡張でしかない」からこその仕事の中でのAIと人間の役割分担=棲み分けは、今の自分の仕事を進めていく中でも大きなテーマとして、常に念頭に置いている。


再々考

至極真っ当な、もはや説教に近い指摘を受けて、僕は再び新サービス名を考えた。
まずは、最初の宿題(UVP観点からのWhy、What、How、Where、When)に立ち返った。

全回答60個の一つひとつを目視で確認して、自分が「プロダクトマネージャー」として重要視している回答を抜粋していった。
例)Why:就活の透明化、自信をもって就活に臨める、何度も失敗できる、何度も挑戦できる、何度も再挑戦できる

次に今までの開発を振り返りながら、「一生に一度の新卒就活だからこそ、納得のいく準備を」という当プロダクトのタグラインを自分の言葉で制作した。

そして、「このプロダクトに込めた想い」、「どんなプロダクトにしていきたいか」について、200字程度で自分の言葉でまとめた。

ここにきて、初めてAIを活用。
(以前は宿題の回答後すぐにAIにネーミングを考えさせていた)

最重視している宿題への回答~どんなプロダクトにしていきたいか、を全てプロンプトに入れ込み、AIにネーミングをアイデアを計200個考えさせた。

その200個のアイデア全てに目を通し、自分のイメージや想いに合致するアイデアを数個抜粋した。

AIにネーミングを考えてもらうのではなく、あくまでアイデアをたくさん出してもらったのである。
僕の脳みそは一つしかないこと、そして時間的な制約があるからこそ、AIを代替と拡張として、分かりやすく言えば、アシスタントとして活用したのだ。

AIが生成したアイデア計200個をまとめたドキュメントの一部

その中から、新卒面接=社会人の一歩目=入口というニュアンスのあるワード”Entry”、「何度でも挑戦できる」プロダクトのコアバリューと合致する”Try”、AIが人に代わって面接を代替するオペレーションシステムであることから”OS”という3つのワードを選出し、それらを組み合わせて、「EnTryOS」という新サービス名を考案し、

来たるAI面接プロジェクトの定例ミーティングで、そのネーミングを発表した。このネーミングで進むことになる、そう当時の僕も本気で思っていた。AIと人の棲み分けをしっかり考え、プロダクトマネージャーとしての自分の想いもしっかり汲んだネーミングである。しかし、こんな言葉を受けることになる。


オフィスの外に出よう

「しっかり考えられてるけど、”面接”というイメージが想起しづらいのでは?」
そして、「”OS”は基板という意味(iOSなど)なのだから、当プロダクトイメージや展開と不一致なのでは?」

これまた真っ当な指摘であった。

上司は、「これはあくまで自分の一意見でしかないし、このネーミングでも全く問題はないよ」

「EntryOS」というネーミングは指摘された懸念点はあるにせよ、自分の想いや意味もしっかりと込められたネーミングであり、イメージの齟齬といったことは、実際にリリースをしてみないと分からないことであるし、リリース後に、サービス名を変更することも可能ではある。

「このネーミングに一旦すべきか」「または考え直すべきか」と迷い、口ごもっていると、上司はこんな言葉がかけてくれた。

「会社のオフィスから出て、立体的に考えてみるべきかも」

サービス名を含めて、当プロダクトの開発当初から、ずっとオフィスの中で考えてきた。時にAIを頼りつつ。

その日の夜に偶然にも、代官山で同世代の起業家などのビジネスパーソンとご飯を食べる予定であった。

18:00、会社のオフィスから外に出て、代官山へと向かった。


『EnTryView』(エントリービュー)

会食での雑談の中で、同世代の彼らに「面接とはどんなイメージか」といったことを聞いてみた。(もちろん、このまんま聞いたのではなく、会話の中に自然に織り交ぜて聞いた)

すると、とにかく”見る/見られる”というイメージを彼らは持っていた。「面接官の目を見て話すのが苦手」や「目線や話の視点が大切」など。その会食の翌日、”オフィスの外で”得たそれらを基に、アイデアを考えた。

「見る」は英訳すると、”see”,”watch”,”look”,”view”など

「面接」は英訳すると、”Interview”

”Interview”には、”view”が含まれている。OSだと面接のイメージを想起しづらかったが、”Interview”/”view”であれば、その問題も解消される。過去に行った競合リサーチでピックアップしたサービス名にも「Interview~」「~ビュー」といったサービス名もあり、AI面接のサービス名としての妥当性も確認できた。

「EnTryOS」のOSをViewに変え、「EnTryView」というサービス名とした。

聞きなれない、言いづらいような違和感に近い感覚が最初はあったのだが、「令和」という年号のように気づけば馴染んでいった。

社会人の一歩目=入り口である新卒面接(Inter”view”)を支援する、何度でも挑戦(“Try”)できるAI面接『EnTryView』というサービス名はこうして誕生した。


EnTryViewのご利用はこちらから▼
https://app.aimensetsu.online/

EnTryViewについてのお問い合わせはこちらから▼
https://ai.unext-hd.co.jp/appaimensetsuonline

佐藤 幹太 (編集長)

AIとハタラクラボ by USEN WORK WELLの副編集長、幹太(人間)です。
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